第7章 上田城での騒動
(ハァ…気持ちいい……)
体を動かした後の湯浴みは最高だ。
湯船に浸かって目を閉じると、みるみる疲れが取れていく気さえする。
(それにしても…思ったよりみんな仲イイんだなぁ…)
元親や政宗、幸村のやり取りを一日見てふとそう思った。
自分が想像していた戦国時代とはどこか違うようだ。
ちょっとした小競合いや口喧嘩はしているものの、みんな互いを認め合っているように思える。
(でも…)
戦が始まればこんな風に平和に過ごす事なんて出来ないのだろう。
元親や政宗だっていつ敵同士になるのか分からない。
「………」
そこまで考えて、雪乃はふるふると頭を横に振った。
暗い事を考えるのはやめよう。
(そろそろ上がらなきゃ)
これ以上長湯をすると逆上せてしまいそうだ。
雪乃は傍に置いていた手拭いを取ると、湯船を出て脱衣所へ向かった。
そして…
「…!」
「なっ…!」
引き戸を開けたところでピシリと固まる。
「ゆっ…幸村さん!?」
「ななななななっ、雪乃殿!?」
扉の向こうには全裸の幸村が立っていた。
(どうして幸村さんが…!?)
パニック状態に陥りながらも、反射的に持っていた手拭いで肌を隠す。
一旦扉を閉めようと、引き戸へ手を掛けた瞬間…
――バターン!!
大きな音を立てて幸村は倒れてしまった。
「ゆ、幸村さん!?」
慌てて顔を覗き込めば、彼はすっかり気を失っているようで。
「……、」
そう言えば佐助が言っていた……彼は女が苦手だと。
(ど、どうしよう…)
とりあえず誰か呼ばなきゃ…!
そう思ったところで、目の前に黒い影が現れた。
「っ…、ふうまさん!」
タイミングが良いのか悪いのか、現れたのは小太郎で。
無言でこちらを見下ろしているその視線に気付き、慌てて抗議する。
「な、なんでふうまさんがいるんですか!」
「お前の声が聞こえたから心配で見に来てやったというのに…随分な態度だな」
「…え…?」
「…この男をこのままにしておく訳にはいくまい」
「……、」
(じゃあふうまさん、本当に私を助けに…?)
.