第7章 上田城での騒動
「…お前も大変だな」
「…!」
いつからそこにいたのか、隣には小十郎の姿が。
「か、片倉さん!政宗さんを止めてもらえませんか?」
「そうしてやりてぇのは山々だが…ああなっちまった政宗様を止める事は俺にも出来ねぇ。悪いな」
「…そんな……」
そう落胆する雪乃だったが…
この後騒ぎを聞き付けてやって来た佐助の雷が落ち、庭を荒らした3人は彼から大目玉を食らうのだった…
「…で?旦那たちはいつまで此処に居座るつもり?嵐も止んだんだし、とっとと出発すれば?」
元親たちを散々叱った後、佐助は彼らに冷ややかな視線を向けてそう言った。
「固い事言うんじゃねぇよ。こっちは半日以上馬走らせてんだぞ?ちょっとぐらい休ませてくれてもいいだろうが」
「つーかうち宿じゃないからね!?そもそも同盟国でもないアンタらになんで武田が協力しなきゃなんないのさ!」
「まぁそう言うな佐助。困っている者を助けるのも武士の務めであるぞ」
「大将…そんな呑気な事言ってる場合じゃないでしょうが」
城主としての自覚を持っていない幸村に佐助は大きな溜め息をつく。
元はと言えば自分が元親の船に潜入したせいなのだが、まさかこんな代償を負う羽目になるとは…
結局幸村の厚意もあり、雪乃たちはもう数日上田城で世話になる事となった。
「雪乃ちゃん、今日は色々ありがとね」
「いえ、お役に立てたなら嬉しいです」
その日雪乃は無償で世話になるのも悪いと思い、自分に出来る事はないかと佐助の手伝いを買って出た。
掃除や洗濯…普段彼がこなしているらしい家事をしているうちに、気付けば日も傾いている。
(猿飛さんて主婦みたい…)
などと心の中で思ったのは秘密だ。
「雪乃ちゃん、汗かいたでしょ?先に湯浴みでもしてきたら?」
「でも…」
「夕餉の支度ならほとんど終わってるし、気にしなくていいよ」
佐助にそう言われ、悪いと思いながらもその厚意に甘える事にする。
一旦部屋に戻った雪乃は、着替えを持って1人湯殿へ向かった。
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