第1章 無口な忍と海賊の親分
「……、」
大柄なその男は珍しい銀髪頭で、左目には紫色の眼帯をしていた。
上半身はほぼ裸と言っていい程露出しており、目のやり場に困ってしまう。
「気分はどうだい?」
どっかりと雪乃の横に腰を下ろすと、男がそう声を掛けてくる。
「は、はい……大丈夫です…。あの…ここは…?」
男が誰なのかも勿論気になったが、今一番知りたかったのはここが一体どこなのかという事だ。
「ここは鬼ヶ島。そしてこの俺が島の主だ」
「………」
男の言葉の意味が理解出来ず、雪乃はぱちくりと瞬きをする。
その様子を男の後ろで見ていた少年が呆れたように口を挟んできた。
「もうアニキ!それじゃ全然伝わらないですって!」
「そうかァ?俺だって"西海の鬼"ってんで最近じゃあ結構有名になってきたと思ってたんだけどよォ」
「ほら、この人ポカンとしちゃってるじゃないですか!ちゃんと説明してあげて下さい!」
「…わーったよ」
やれやれといった様子で、男が再びこちらへ向き直る。
先程とは違い、その目はこちらを探るような鋭いものだった。
「俺の名は長曾我部元親。四国とこの西海を束ねる鬼さ」
「……、」
長曾我部元親…
自分は歴史を専攻していた訳ではないのでそこまで日本史に詳しくはないが、有名な大名の名前くらいは聞いた事がある。
(歴史上の人物と同姓同名って事…?)
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