第1章 無口な忍と海賊の親分
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「…ん……」
次に雪乃が目を覚ますと、視界には木の天井が映った。
どうやら自分は布団の上に寝かされていたらしい。
(…ここどこだろ……?)
重い体を起こし辺りを見回す。
やはりそこは自分の部屋ではなく、8畳程の和室だった。
(やっぱり夢じゃないんだよね…)
男たちに追い掛けられた時、転んで痛みを感じた腕に目をやる。
けれど…
(…あれ……?)
擦り傷が出来たと思っていたそこには、傷跡などどこにも無かった。
あの時、確かに血が滲んでいたはずだ。
たいした傷ではなかったとはいえ、こんな短時間で治るものだろうか?
それとも自分は、傷が完治してしまうくらい長い時間ここで眠っていたのだろうか?
そんな事を考えていると、突然部屋の襖が開いた。
「…!あっ、気が付いたんですね!」
「……、」
部屋に入ってきたのは、自分より少し年下であろう少年。
心配そうな顔でこちらの様子を窺ってくる。
「あの…」
「今アニキを呼んできますので、そのままお待ち下さい!」
そうまくし立てると、少年は嵐のように走り去っていった。
(行っちゃった…)
聞きたい事が沢山あったのに…
けれど彼は誰かを呼んでくると言っていた。
("アニキ"って誰だろ…?)
それから程なくして、再びこの部屋へ向かってくる足音が聞こえてくる。
「入るぜ?」という声と共に、また見知らぬ男が姿を現した。
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