第7章 上田城での騒動
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(うぅ…ほとんど眠れなかった…)
結局昨夜は、嵐が過ぎるまで小太郎と過ごした雪乃。
ただの添い寝で済むはずもなく、思い出すだけでも顔から火が出そうなくらい恥ずかしい目に遭った。
(ふうまさんのばか…!)
そう悪態をつきながら着替えを済ませ部屋を出ると…
「…?」
どこからか雄叫びのような声が聞こえる。
…恐らく声の主は幸村だ。
「政宗殿!少々会わぬうちに腕が鈍ったのでは御座らぬか!?」
「Haッ!んな訳ねぇだろ!」
渡り廊下から見えたのは、幸村と政宗の姿。
昨日の嵐が嘘のように晴れた空の下…2人とも道着のような物を着て互いに武器を交えていた。
「…ったく、朝っぱらからうるせぇなァ」
「元親さん!」
そう言って欠伸をしながら姿を現したのは元親。
2人の姿を見てうんざりといった表情をしている。
「昨夜あんだけ飲んだくせに元気なこった」
「あれは…お稽古でもしてるんですか?」
それにしては激し過ぎる気もするが…
庭の地面は荒れ、灯籠は倒され…下手したらこの屋敷にも被害が及ぶのではないかと思うくらい、2人の勢いは凄い。
「…ん?雪乃じゃねぇか。Good morning!」
「お、おはようございます」
雪乃と元親の姿に気付いた政宗は一旦攻撃の手を止めた。
「おい真田、イイ事思い付いたぜ」
「…?何で御座ろう?」
「この勝負に勝った方…雪乃にkissしてもらうってのはどうだ?」
「ちょ、ちょっと政宗さん!?」
「…きす?で御座るか?」
当然南蛮語を理解出来ない幸村は首を傾げている。
それは元親も同じで。
「嫌な予感しかしねぇが……雪乃、"きす"って何だ?」
「そ、それは…」
雪乃が返答に困っていると、代弁するように政宗が答える。
「接吻だよ接吻。褒美があった方が燃えるしな」
「なっ…ななななんと破廉恥な!そそそ某はそのような事認めませぬぞ!」
「そうだぞ独眼竜!だったら俺も混ぜてもらおうか!」
「えぇっ!?元親さん!?」
いつも自分の味方でいてくれる元親までそんな事を言い始めた。
雪乃が止める間もなく、彼も2人の間に割って入っていく。
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