第7章 上田城での騒動
「政宗殿ォォォォオ!」
屋敷に入ってすぐ、大きな足音と共に聞こえてきたのは男の叫び声だった。
佐助の主人にしてこの城の主…真田幸村だ。
「…相変わらずcrazyな野郎だな」
「政宗殿!お元気そうで何よりで御座る!」
冷ややかな視線を向けてくる政宗に構う事なく、久しぶりに会う好敵手に瞳を輝かせる幸村。
ふとその視線は雪乃の方にも向けられる。
「そ、そなたが佐助の言っておった…長曾我部軍に居られるという御方か?」
「はい、雪乃と申します」
「そ、某は真田源二郎幸村!どうぞ幸村とお呼び下され!」
そう言う幸村の顔は少し赤いように見えた。
「エライエライ。大将にしちゃ上出来だよ」
「なっ…馬鹿にするな佐助!某とて挨拶ぐらい出来る!」
「…?」
2人のやり取りを不思議な顔で見ていた雪乃に佐助が説明をする。
「実はうちの大将、女の子が大の苦手でさー。たまーに失礼な事しちゃうかもしれないけど、まっそこは大目に見てやってよね」
「は、はぁ…」
「よ、余計な事を申すな!」
「……、」
何だか不思議な主従関係だと、雪乃は2人を眺めながら思った。
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「雪乃、こっちにも酌を頼むぜ」
「あっ、はい」
「独眼竜テメェ!雪乃に酌してもらっていいのは俺だけだァ!」
「酔っ払いは黙ってな」
「んだとォ!誰が酔ってるっつーんだよ!」
「じゃあ俺と勝負してみるか?」
「望むところだ!」
「……、」
上田城に着いた日の晩。
広間では細やかな宴が開かれていた。
外は嵐で五月蝿かったが、広間での賑やかさもそれに負けていない。
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