第7章 上田城での騒動
「チッ…降ってきやがったか」
上田城まであと少しというところで、ぽつぽつと雨が降り始めた。
昨日と同じく馬で移動中の元親、政宗一行。
羽織っていた上着を脱いだ元親は、すぐ目の前にいる雪乃に頭からそれを被せた。
「…元親さん?」
「なんにも無ぇよりはマシだろ?」
「でも…元親さんが風邪引いちゃいますよ?」
「バーカ、そんな事気にすんな。第一俺はそんなに柔じゃねぇ」
「……、ありがとうございます」
「………」
何となくだが、雪乃の様子が昨日までとは違う気がする。
元気が無いというか何というか…
慣れない旅で疲れているだけだろうか?
(雪乃のヤツ…またなんか隠し事してんじゃねぇだろうな…)
今この場で問い質しても良かったが、彼女がもし自分の事を信用してくれているなら、いつかちゃんと向こうから打ち明けてくれるだろうと思い直した。
「おっ、見えてきたぜ」
それから半刻程馬を走らせると、ようやく上田城が見えてきた。
大きくて立派な城だ。
「ハァ……ホントに来ちゃったのね」
城の門で待ち構えていたのは佐助。
元親たちの姿を見るなり大きな溜め息をつく。
「それが客人に対する態度かよ」
「アンタら勝手に押し掛けてきただけでしょうが!誰も招待してないっつーの!」
「つべこべ言ってねぇで手拭いの一つでも持って来いよ。こちとら雨に降られて散々なんだからな。…あ、あと湯浴みの準備も頼むぜ」
「…どうだろ、この態度」
次々と図々しい事を言ってくる元親に佐助は呆れた。
けれどずぶ濡れになっている雪乃の姿を見て、早いところ温まってもらわなくてはと屋敷に入るよう促す。
.