第6章 初めての船旅
「っ…ふうまさん!」
「大方、俺が雪乃に何かしねぇか見張ってたんだろ」
「………」
その言葉に小太郎は何の反応も示さなかったが、政宗の言う通りだった。
彼女がまた妙な事に巻き込まれないか心配だったのだ。
「この間はお前に背後を取られたが…二度は無ぇ」
「………」
「今の話、どうせ全部聞いてたんだろ?…まっ、雪乃に御執心のお前の事だ…心配は要らねぇと思うが、この事は他言無用だぜ?」
「………」
言われなくても解っているとでも言うように、フンと鼻を鳴らす小太郎。
その様子を見てひと先ず安心した政宗は、部屋に戻ると言って立ち上がった。
「あ、あの…政宗さん!」
「…?なんだ」
「その…色々とありがとうございます」
「ハッ、気にすんな。…まぁでもこの俺を動かすんだ…それ相応の報酬はあとでたっぷり頂くぜ?」
「え……」
「じゃあな…good night」
「……、」
(どうしよう…)
報酬を払えと言われても、自分にはお金など無い。
そう雪乃が困惑していると、すぐ横で大きな溜め息が聞こえた。
「ふうまさん……怒ってます…よね?」
「………」
政宗が去った後…
すぐ横で溜め息をついた小太郎を恐る恐る見上げる。
無言のままの彼が怖い。
「あの…私……」
そう言い掛けた時…
「…!」
突然小太郎に抱き締められた。
「ふ、ふうまさん…?」
「………」
相変わらず無言の彼。
てっきり怒っているのかと思ったが、雪乃を抱き締めるその腕は不思議と優しい。
「……、」
それ以上声を掛けるのは何となく憚られ、そのまま大人しくしていると…
「いっ……いたたたたたっ!」
突然小太郎の腕に力が込められる。
「い、痛いですふうまさんっ!」
「…仕置きだ」
「ごめんなさい!」
「多少の怪我ならすぐに治るのだろう?」
「ひ、ひどい…」
そう言う雪乃を見て、小太郎はようやく力を弛めた。
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