第6章 初めての船旅
(元親さん、ごめんなさい…)
心の中でそう謝った後、雪乃は意を決したように口を開いた。
「元親さんは私の事を心配して…他の人には話さないようにって言ってたんですけど…」
「安心しな…俺は誰にも話さねぇよ」
「…ありがとうございます……。信じてもらえるか分からないんですけど…」
彼にひと通りの事を話す。
自分がこの世界の人間ではない事…
小太郎に助けてもらった後は元親の屋敷で世話になっていた事…
「Hum…それが本当ならスゲェ話だな」
「…やっぱり……信じられませんか…?」
「誰もそんな事言ってねぇだろ?アンタが嘘をつくmeritなんてどこにも無ぇしな…。それに、俺はアンタが嘘をつくような人間だなんて思っちゃいねぇ」
「…政宗さん……」
彼の言葉にホッと胸を撫で下ろす。
元親との約束を破ってしまったのは心苦しかったが、政宗ならきっと信用しても大丈夫だろうという漠然とした思いがあった。
「…それで?そんな体質になっちまったのはこっちの世界に来てからなのか?」
「はい……どうしてこんな体になってしまったのか自分にも解らなくて…」
「…そうか」
暗い顔をする雪乃を安心させるように、その頭を優しく撫でる政宗。
「心配すんな。その件についても俺が出来る限り調べてやる」
「政宗さん…」
「でも本当にいいのか?西海の鬼には話さなくても」
「…そ、それは……」
「アンタのその体質の事を聞いたところで、あの男がアンタを気味悪がったり妙な目で見たりする事は無ぇと思うが?」
「……、」
それはそうかもしれない。
けれどやはりまだ自分でも受け入れられない今、もう少し気持ちの整理がつくまで待ってほしいと雪乃は伝える。
「…解ったよ。アンタがそこまで言うなら約束する」
「ありがとうございます…」
「…それより」
そう言ってふと政宗は天井を見上げた。
その顔はどこか険しい。
「さっきからそこにいるのは分かってんだよ」
「…?」
姿の見えない相手に話し掛ける彼に雪乃は首を傾げる。
「風魔だろ?コソコソしてねぇで出て来やがれ」
政宗がそう言った直後、2人の目の前に小太郎が現れた。
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