第6章 初めての船旅
「…傷が……、」
「………」
見られた…
きっと彼だって気味悪がるに違いない。
「お前…どうして……」
「…私にも……解りません……」
小さな声でそう答えるのが精一杯だった。
自分の体は一体どうなってしまったのか…
「お願いです、この事他の方には黙っていて下さい!」
「……Why?」
「だって……おかしいです、こんなの…」
元親や他の人に知られたらどう思われるか、考えただけでも怖い。
「…お願い、します……」
「………」
消え入りそうな声でもう一度そう言う雪乃を見て、政宗は小さな溜め息をついた。
「OK……アンタがそこまで言うなら黙っててやる」
「…政宗さん……」
「けど…1つだけ条件があるぜ?」
「え…?」
「アンタが一体何者なのか答えてもらおうか」
「…!」
自分の正体を明かす事は絶対に出来ない。
(元親さんと約束したから…)
「…それは…出来ません」
「アンタも頑固だな…。だったらその傷の事…西海の鬼に話してもいいのか?」
雪乃を試すようにそう言う政宗。
それでも彼女は打ち明けようとしなかった……が、膝の上で握っていたその拳に一粒の涙が零れ落ちる。
「お、おい…!」
「っ…」
涙を零す雪乃に流石の政宗も慌てる。
泣かすつもりなど無かった。
ただ雪乃がどう出るか試したかっただけだ。
「…悪い」
そう言って政宗は彼女の体を抱き寄せる。
小さく震えている体。
先程の会話からすると、彼女自身も自分の体に何が起きているのか解っていないようだった。
「アンタを泣かすつもりは無かったんだ……意地の悪い事を言ってすまなかった」
「……、」
「…なぁ…少しは俺を信用してくれねぇか?アンタが何者だろうが、俺はアンタをどうこうする気は無ぇ」
言い方は悪いが、政宗は彼女に興味があっただけだ。
西海の鬼や伝説の忍に一目置かれている彼女がどういう人間なのか…
しばらく嗚咽を漏らしていた雪乃だったが、政宗に宥められようやく泣き止む。
彼を悪い人間だとは思わない。
今だって、こうして自分の為にわざわざ傷薬を持って来てくれたのだ。
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