第6章 初めての船旅
*
「そんじゃ雪乃は俺と一緒な」
「は、はい。よろしくお願いします」
「ハハッ、そんなに緊張する事ねぇだろ」
昼過ぎ。
一行は船を降り、ここからは馬で上田城まで向かう事になった。
乗馬の経験が無い雪乃は元親と同じ馬に乗るよう指示される。
(わっ…思ったより高い……)
それが馬の背中に乗った初めての感想だった。
想像以上に自分の目線が高くなる。
「長時間乗るのは流石にキツいだろうから、辛くなったら遠慮なく言えよ?」
「はい、ありがとうございます」
背中に感じる元親の温もりとその優しい言葉に、自然と笑みが零れた。
(本当に嵐なんか来るのかな…?)
今日は昨日と同じくよく晴れていて、嵐が来そうな気配はまだ無い。
「そういやお前…怪我は大丈夫なのか?」
ふと元親が背後から雪乃の左手を取る。
「はい、ちょっと切っただけですから」
「ならいいけど…女なんだから気を付けろよ?」
「…はい」
「それにしても、ホント小せぇ手だなァ」
「……、」
雪乃の手を握ったまま、物珍しそうに呟く元親。
それを振り払う事など当然出来ず、彼女は元親と他愛ない話をしながらしばらく移り変わる景色を眺めていた…
.