第6章 初めての船旅
「…!?」
「…俺の仕置きを受ける覚悟があるならお前も好きにしろ」
「……、」
「それとも…」
今度は雪乃の耳元に唇を寄せる彼。
「…本当は仕置きをされたくて俺の気を引こうとしているのか?」
「なっ…ち、違います!」
「…どうだかな」
顔を真っ赤にさせている雪乃を鼻で笑うと、小太郎は姿を消してしまった。
「な、何なのもう…」
「よぅ雪乃、昨夜はよく眠れたか?」
「……、」
雪乃が甲板へ出ると、そこには今日も釣りをしている元親の姿があった。
「す、すみません…私昨日、お話の途中で寝ちゃいましたよね…」
「ハハッ、気にすんな!初めての船旅で疲れてたんだろ」
そう笑う彼の隣に腰を下ろす。
「その顔じゃあ風魔とは仲直りしたのか?」
「え……えぇ、まぁ…」
一応仲直りはした……と思う。
まさかキスをされるなんて思ってはいなかったが。
「どうした?なんか顔赤くねぇか?」
「えっ!?」
「…まさか風魔に何かされたんじゃねぇだろうな?」
「っ……さ、されてませんよ!そんな事より元親さん、釣り糸引っ張られてますよ!」
「うぉっ…!」
雪乃に指摘され慌てた元親は、力一杯竿を引っ張る。
その先には大きな獲物が引っ掛かっていた。
「わぁ…すっごく大きいですね!」
「おぅ!後で俺が捌いてやるよ」
(…何とか誤魔化せたみたい…)
獲物に夢中になっている元親を見てホッと胸を撫で下ろす。
その後2人は釣った魚をみんなに振る舞う為、台所へ移動した。
「あとは野菜も切っておこうかな…」
奥州から小十郎が持って来てくれたという野菜をまな板に乗せる。
元親はと言えば…今日はまだ釣れそうだと言って、魚を捌いた後また釣りに行ってしまった。
1人になった台所で雪乃は鼻歌を歌いながら野菜を切り始める。
と、その時…
「…Hey、雪乃」
「きゃあっ!」
突然耳元で聞こえた声。
驚いた拍子に、雪乃は思わず包丁で指を切ってしまった。
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