第6章 初めての船旅
雪乃は小太郎に咎められた事を元親に掻い摘まんで話した。
「風魔の肩を持つ訳じゃねぇが…アイツはアイツなりにお前の事を心配してんだろ」
「それは…解ってます…」
「けどまぁ…お前が信じたいって思った人間は信じればいいんじゃねぇか?」
「…え……?」
彼の意外な言葉に驚く。
てっきり小太郎と同じ事を言われると思っていたのに…
「確かに俺も最初は風魔と同じ気持ちだった。けど…お前には不思議な力がある気がしてよ」
「…不思議な力?」
「ああ…。風魔がいい例だろ?あの伝説の忍をお前は手懐けちまった訳だからな」
「て、手懐けてはないと思いますけど…」
むしろいつも怒られてばかりだ。
「俺は風魔の事をよく知ってる訳じゃねぇが…アイツが他人の心配をするのも、他人に固執するのも、俺は未だに信じられねぇんだ」
「……、」
「それに…もしお前が悪いヤツに騙されたとしても…そん時はこの俺が守ってやればいいだけの話だしな」
「元親さん…」
本当に…どうして彼はこうも優しくて温かいんだろう…
見知らぬ世界で独りぼっちだった自分を家族同然だと言ってくれたり、不安になった時はいつも自分の欲しい言葉をくれたり…
「どうだ?今の兄貴っぽかったろ?」
「ふふっ、そうですね」
そう戯ける元親に思わず笑みが零れる。
(後でもう一度ふうまさんと話してみよう…)
そう決心した雪乃だったが…
「…呑気に眠りやがって」
あれから半刻ほど他愛ない話をしていた雪乃と元親。
そのうちに睡魔が襲ってきたのか、彼女はすっかり元親の腕の中で眠ってしまっていた。
「"兄貴"……か」
さっきは戯けてそう言ったが、あれは本心ではない。
「兄貴はこんな事しねぇっつーの…」
そう呟いた後、元親は無防備な彼女の額にそっと口付けをした…
.