第6章 初めての船旅
(…あ……)
雪乃が甲板へ出ると、そこには猪口を片手に月を眺めている元親の姿があった。
本当に近々嵐が来るのかと思うくらい、今夜は晴れて月が綺麗だ。
「…?雪乃じゃねぇか」
雪乃の気配に気付いた元親は、彼女にこちらへ来るよう促す。
「どうした?眠れねぇのか?」
「え、ええ…まぁ……」
「………」
昼間と違って明らかに元気が無い彼女。
また何かあったのだろうか?
「ここに座れ」
「わっ…!」
突然腕を引っ張られたかと思えば、胡座をかいていた彼の脚の間に座らされる。
そして何故か猪口を手渡された。
「雪乃も一杯飲んでみろよ」
「えぇっ!ダメですよ、私まだ未成年ですから!」
「ミセイネン?」
「えーっと…成人してないって事です」
「お前確か18だろ?もう立派な大人じゃねぇか」
「そ、そうなんですか…?」
「おぅ」
(そっか…この時代じゃ18歳はもう大人なんだ…)
「ほら、一口でいいから飲んでみな」
そう勧められ、恐る恐る猪口に口を付けてみる。
「ぅ……苦い…」
「ハハハッ!雪乃にはまだ早かったか」
雪乃から猪口を取り上げた元親は、残っていた酒を全て飲み干した。
「…で?どうした?」
「…?」
「暗い顔して…なんかあったんだろ?」
「……、」
「"何でもない"は無しだぜ?」
先回りしてそう言われ思わず口を噤む。
元親だってきっと小太郎と同じ事を思っているに違いない。
ここは自分の住んでいた世界とは違う…
簡単に人を信用するなと…
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