第6章 初めての船旅
「…その様子では…布団の中で仕置きをされたいと受け取ってもいいのか?」
「なっ…ち、違いますよ!私は明日の為にそろそろ休もうと…」
「…それは俺との話が終わってからだ」
「ぅ…」
小太郎が納得するような説明をしなければ本当に寝かせてもらえそうにない。
確かに昼間の自分の行動は少し軽率だったかもしれないが、佐助の事をどうしても悪い人間だとは思えなかった。
それに…目の前で困っている人がいるのに、それを見て見ぬフリなど自分には出来ない。
怒られる事を覚悟してそう話すと、小太郎はいつものように溜め息をつくのではなく恐い顔をしている…ように見えた。
「…此処はお前の住んでいた世界とは違う。何故それが解らないのだ」
「……、」
「猿飛は俺と同じ忍…。主の命とあらば人を殺す事など何とも思わない。もし彼奴が間者で、西海の鬼の首を狙っていたとしたらどうする?お前は自分の知らないところで、彼奴の手助けをしていた事になるのだぞ」
「っ…」
そんな事考えもしなかった。
もし自分のせいで誰かが傷付くような事があったらきっと耐えられない。
小太郎の言う事は理解できる。
でも…
(そんなの悲し過ぎるよ…)
誰の事も信用しちゃいけないなんて…
「…何処へ行く」
おもむろに立ち上がった雪乃は、覇気の無い表情で小太郎に背を向けた。
「…少し頭を冷やしてきます」
「………」
(…少々言い過ぎたか)
雪乃の後ろ姿を見送りながら小太郎は思う。
西海の鬼だろうが独眼竜だろうが、彼らがどうなろうと自分の知った事ではない。
自分はただ雪乃の事が心配なだけだ。
その身も勿論心配だが、もし彼女のせいで誰かが傷付くような事があれば、彼女はずっと自分自身を責め続けるだろう。
(…俺はいつからこんなお節介になったのだ)
"心"などとうの昔に捨て去ったはずなのに…
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