第6章 初めての船旅
「俺の船に忍び込むとはイイ度胸だなァ、真田の忍よォ」
「ちぇー、バレちまったか」
小太郎により、佐助が船内にいるとの知らせを受けた元親。
佐助は慌てる様子もなく完全に開き直っている。
「いやー、鬼の旦那と竜の旦那の姿が見えたからさー、珍しい組み合わせだなーと思ってつい調べたくなっちゃった訳よ」
「お前が危惧するような事は企んじゃいねぇよ」
そう言うのは政宗。
久しぶりに見る佐助の顔にうんざりといった表情だ。
「…で?コソコソ嗅ぎ回ってタダで帰れるとは思ってねぇよな?」
「まぁまぁ鬼の旦那、そんなに恐い顔しないでよ。俺様まだ何もしてないって」
「俺たちを差し置いて、ちゃっかり雪乃の手料理を食ったらしいじゃねぇか」
「………」
(…え?怒るとこそこ?)
元親の怒るツボが解らない。
けれど彼にとって、雪乃の存在がとても大切だという事だけは解った。
(益々気になるなぁ、雪乃ちゃんの事)
心の中でそう呟きながら、佐助はある事を思い出す。
「あっ、そうそう。もうすぐ嵐が来るみたいだから、旦那たちも気を付けた方がいいよ」
「…嵐だと?」
「そっ。さっきカラスたちが騒いでたんだ。…どう?俺様役に立ったでしょ?だから今回は見逃してよ」
「…調子のイイ野郎だな」
しかし嵐が来るとは聞き捨てならない。
この要塞の形をした船なら雨風を凌ぐ事は出来るだろうが、高波に耐えられるか怪しいところだ。
自分たちだけならまだしも、雪乃を危険な目に遭わせる訳にはいかない。
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