第6章 初めての船旅
と、その時…
「独眼竜!雪乃に何してやがる!」
「…チッ、うるせぇのに気付かれたか」
今まで釣りをしていた元親が、釣った魚を手にこちらへやって来た。
政宗から解放された雪乃は、慌てて元親の背後に隠れる。
「雪乃にちょっかい出すんじゃねぇって約束しただろうが!」
「Haッ!そんな約束をした覚えは無ぇなァ。俺はただ雪乃の事を嗅ぎ回るなって言われただけだぜ?」
「テメェ…船から突き落とされてぇのか」
ああ言えばこう言う政宗に苛立ちを覚える元親。
「…ったく、こんな時に風魔は何してやがんだ。何の為について来たんだよ」
「…風魔?」
独り言のように呟いた元親の言葉を政宗は聞き逃さなかった。
風魔とは、あの伝説の忍の事だろうか?
そんな彼の名が何故ここで?
「…オメェには関係無ぇよ」
「西海の鬼…アンタはいつからそんなに隠し事が好きになったんだ?」
「…フン」
これ以上答える気は無いと言うように、元親は雪乃を連れて船室へと姿を消した。
「…風魔ねぇ」
政宗はふと、自分が四国へ降り立った日の夜の事を思い出した。
雪乃を何者なのかと問い詰めていた時、背後から自分にクナイを突き付けてきた人物…
あの時姿は見えなかったが、あれが風魔だったのではないか?
「フッ…面白ェ」
伝説の忍を飼い慣らすなんて、益々雪乃に興味が湧いてくる。
(…その正体…絶対ェ突き止めてやるからな)
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