第5章 奥州の竜
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翌朝…
(昨夜はひどい目に遭ったな…)
酔っ払った元親に絡まれ、政宗に素性を聞かれ、終いには小太郎にからかわれた。
(元親さんは何も覚えてなさそうだけど…)
けれど政宗は違う。
次顔を合わせたら、きっとまた同じ質問をされるに違いない。
(今日は部屋から出ないようにしようかな…)
そんな事を考えている時だった。
「雪乃、起きてるか?」
部屋の外から掛けられた声……それは元親だった。
「奥州へ…ですか?」
「ああ」
雪乃の部屋を訪れた元親は彼女にこう話した。
自分と一緒に奥州へ行かないか、と。
「独眼竜にうちの船を貸す事になってな。それに奥州は交易が盛んなんだ。可能性は低いだろうが、もしかしたらお前の探してるもんの情報も聞けるかもしれねぇ」
「元親さん…」
彼はちゃんと自分の事も考えてくれていたのだ。
「私もついて行っていいんですか?」
「当たり前ぇだ、お前をここに残しておく訳にはいかねぇしな。それに探し物の事はお前がいなきゃ分かんねぇだろ」
「……、」
確かにそうだ。
納得したところで改めて元親に礼を言う。
「そう畏まんな。近頃籠りっきりで体も鈍ってたし、久しぶりに海へ出られて俺も嬉しいんだからよ」
そう無邪気に笑う彼を見ると、本当に海が好きなんだなぁとこちらまで和んでしまう。
(あっ、そうだ…)
ここを離れるなら一応小太郎にも知らせておいた方がいいかもしれない。
後で置き手紙でも書いておこうか…
そう思った時だった。
「わっ…!」
突然目の前に現れた影。
それはたった今思い浮かべていた人物、小太郎で。
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