第5章 奥州の竜
「西海の鬼のオンナ…ってところか?」
「め、滅相もありません!私はただここでお世話になってる者で…」
「…ふーん」とこちらを品定めするような政宗の視線が痛い。
「なぁ…アンタもpartyには参加するんだろ?」
「い、いえ…私は……」
「partyには華も必要だ。アンタなら申し分無ぇ」
そう言って政宗は、雪乃の顎に手を掛け目を合わせた。
ドキリと跳ねる心臓。
この世界の戦国武将は、何故こうも美形が多いのかと場違いな事を考えてしまう。
雪乃が固まって動けずにいると、政宗の背後からまた別の男の声が聞こえた。
「…政宗様。お戯れも程々にされよ」
「…チッ、イイところで邪魔してんじゃねぇよ小十郎」
舌打ちをしながら渋々雪乃から離れる政宗。
小十郎と呼ばれた男は左頬に傷があり、強面なのも相まって近寄り難い雰囲気を纏っている。
「…政宗様がちょっかいを出して悪かったな」
「い、いえ…。私はまだ宴の準備がありますので、失礼させて頂きます…」
小十郎の意外な言葉に少し驚きながらも、助かったとばかりに雪乃はその場から足早に立ち去った。
「…小十郎。面白ぇもん見つけちまったぜ」
「………」
政宗の言葉に、小十郎は嫌な予感しかしない。
「…まさかあの娘に興味を持ったなどと言う訳ではありますまいな」
「Haッ!流石よく解ってるじゃねぇか」
「………」
予感は的中した。
しかしあの娘のどこに政宗が興味を持ったのか解らない。
少し器量が良いだけの、何の変哲もない娘ではないか。
「あの女…南蛮語を理解してやがった」
「………」
自分がpartyに参加するのかと聞いた時、彼女は迷わず"ノー"と答えた。
それに…
「…なんか匂うんだよ」
「一体何を根拠に…」
「決まってるだろ……竜の勘だ」
「………」
半ば呆れた様子の小十郎に、政宗は得意気な顔でそう返した。
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