第3章 再会と約束
「…オメェ本気か?」
答える代わりにこくりと頷く小太郎。
そんな彼を見て元親は肩を震わせた。
「…クッ…、ハハッ……ハハハッ!」
一瞬怒りに震えているのかと思ったがそうではない。
そのうちに元親は腹を抱えて笑いだした。
「あの伝説の忍がねぇ…。オメェも雪乃に絆されちまったって訳か……こりゃあ傑作だ!」
「………」
小太郎は肯定も否定もしない。
けれど今この瞬間、元親は気付いてしまった。
『オメェも雪乃に絆されちまったって訳か』
確かに自分はそう言った。
お前 "も" と。
(風魔の事笑えねぇなァ…)
鬼ヶ島の鬼たる自分が、会って間もない娘に絆されるなんて。
けれど悪い気はしない。
むしろ胸のモヤモヤが晴れ、清々しい気さえする。
「風魔…雪乃の側にいる事は許可してやるが…コイツを傷付けるような真似したら、そん時はキッチリ落とし前着けてもらうぜ?」
「………」
小太郎が頷く事はなかったが、彼が雪乃を裏切るような真似はしないと、何故か元親には確信が持てた。
「…ったくオメェは…どれだけ俺に心配掛けりゃ気が済むんだ」
「…ごめんなさい」
このやり取りももう何度目だろう。
小太郎が去った後…屋敷へ戻る道中、雪乃はこれまでの経緯を元親に話した。
雪乃が貧血で倒れた事を聞いた彼は、彼女が大丈夫だと言うのも無視してその体を背負う。
「…勝手に俺の前からいなくなんな」
「…はい」
「お前が元の世界に帰っちまったんじゃねぇかって焦っただろうが」
「元親さん…」
「…お前がどう思ってるかは知らねぇが……その…お前の事は家族同然だって思ってる。俺だけじゃなくて…颯も他の野郎共も」
「……、」
元親の言葉に胸が温かくなる。
自分の面倒を見てくれるだけじゃなく、そんな風に思ってくれていたなんて…
「ありがとう、ございます…」
「…おぅ」
(…今はまだこれでいいんだよな)
心の中でそう呟く元親の言葉が雪乃に届く事は無かったが、彼女はその大きな背中をぎゅっと抱き締めた…
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