第3章 再会と約束
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「…雪乃がいねぇだと?」
「は、はい!」
その日の夕刻、慌てた様子で元親の部屋を訪れたのは颯。
いつもなら夕飯の支度の為台所に姿を現す雪乃だったが、彼女はいつまで経っても現れなかった。
心配になった颯が彼女の部屋を訪ねるもそこは蛻の殻。
彼女が黙って外出するとは思えなかったが、屋敷中を探してみてもやはりその姿はどこにも無かった。
(まさか俺の事が嫌いになって出て行っちまったのか…?)
最悪の状況が頭の中を過る。
今朝会った時も彼女の様子はおかしかった。
恋人でもない男にいきなり接吻をされ、ショックで屋敷を出て行ってしまったのだろうか…
「颯!オメェは野郎共ともう一度隈無く屋敷の中を探せ!俺ァ外を見てくる!」
「わ、解りました!」
(アイツ…1人で森へ行ったなんて事はねぇよな?)
もし彼女がすでに元の世界へ帰ってしまっていたとしたら…?
その可能性も無い訳ではない。
(そんなん絶対ぇ認めねぇぞ!俺に黙って帰っちまうなんて…!)
たった数日の間に、雪乃の存在は元親が思っている以上に大きなものとなっていた。
家族でもなく恋人でもない…けれど守ってやりたいと思う大切な存在。
この感情が何なのかはまだ解らなかったが、それより今は雪乃に会いたい…
元親はその一心で、彼女が最初にいたという森を駆け回った。
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