第1章 無口な忍と海賊の親分
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「ん……」
肌寒さに目を覚ませば、そこは真っ暗な闇の中だった。
(…ここ……どこ……?)
右も左も真っ暗だと感じていたが、よく目を凝らして見ると周りには沢山の木々がそびえ立っている。
どうやらここはどこかの森の中らしい。
(…って、どうして!?)
どうやってここまで来たのか全く記憶に無い。
そもそも自分は境内の階段から落ちたのではなかったか…?
(と、とにかく家に帰らなきゃ…)
そう思って立ち上がったと同時にはたと我に返る。
(…私の家ってどっち…?)
辺りを見回しても、やはりそこには木があるだけで道という道すら無い。
(どうしよう…)
途方に暮れる雪乃だったが、ここで突っ立っていたところで何の解決にもならない事ぐらい考えなくても解る。
ひとまず人を探さなくては…
そう思って歩き始めた矢先、遠くの方で明かりがちらつくのが見えた。
(た、助かった…!)
もしかしたら人かもしれない。
この場所がどこなのかさえ判れば家に帰れるはず。
逸る気持ちを抑えきれず、雪乃は明かりの方へ全力疾走した。
(あっ…!)
ようやく明かりの近くまで辿り着いた彼女。
明かりの正体は松明だった。
勿論そこにはその持ち主の姿があって…
「あのっ…!」
息を切らせながらその人影に声を掛ける。
そこにいたのは、綺麗とは言い難い着物のような衣服を纏った男2人だった。
「あぁん?」
「…っ!」
明らかにガラの悪い男たち。
人を見た目で判断するのは良くないが、それでも到底その男たちが真っ当な人間であるとは思えない。
「おいおい、こんな所に女が1人でいるなんてなァ」
「……、」
「しかもなかなかの上玉じゃねぇか」
値踏みでもするかのように、上から下まで雪乃の姿を眺める男たち。
その視線にぞくりと背筋が粟立つ。
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