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*キミと出会えた奇跡*【戦国BASARA】

第1章 無口な忍と海賊の親分




「もぅ…お母さんてばホントにおっちょこちょいなんだから…!」

そう悪態をつきながら、彼女──八神雪乃は神社の境内を全力で走っていた。
ここは彼女の実家。
地元では有名な由緒正しい神社だった…2年前までは。
2年前彼女の兄が不慮の事故で亡くなって以来悪い噂が広まり、神社を訪れる参拝客は激減してしまったのだ。
それでも彼女は弱冠18歳という若さでありながら、いつかは以前のように沢山の参拝客が訪れると信じて日夜家の手伝いをしている。

そんな彼女は数分前、突然母にお使いを頼まれたのだった。

『お母さんすっかり忘れてたんだけど、これから大事なお客様がいらっしゃるのよ』

だから茶菓子を買ってきてほしい、と。
母の話では、来客があるのは1時間後…急がなければ間に合わない。

(大事なお客さんて誰だろ…?)

自分も知っている人だろうか?
けれどそれなら母は"大事なお客様"なんて言い方はしないだろう。

(とにかく急がなくちゃ…)

そう思い直し、雪乃は神社の階段を駆け下りた。
ちょうど百段あるその階段。
物心ついた頃からほぼ毎日この階段を上り下りしているとはいえ、急いでいる時は本当にもどかしい。


──雪乃…


「…?」

階段を半分まで下りたところで、ふと名前を呼ばれたような気がした。
ぴたりと足を止め後ろを振り返ってみる。

(…誰もいない)

背後どころか辺りに人の気配は無い。

(…気のせいだったかな?)

そう思い直し、雪乃は再び階段を下りようとした。
その時…


「きゃっ…」

うっすら生えていた苔に足を取られ階段を踏み外す。
まるでスローモーションのように前へと傾く体。
当然重力に逆らう事など出来ず、彼女の体は階下へ向かって落ちてゆく。

(嘘…っ…)

このまま落ちれば只では済まない。
雪乃の頭の中を、一瞬"死"という文字が過った。
冗談じゃない。
神社の娘が境内の階段を踏み外して死ぬなんて、そんな馬鹿な話…
兄の時に続き、また不穏な噂が流れてしまう。

そう考えている間にも、彼女と地面の距離はあっと言う間に縮まっていく。

(誰か助けて…っ…)

祈るように目を閉じた直後、雪乃の意識はそこでぷつりと途切れた…



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