第3章 再会と約束
(…ったく、何やってんだ俺ァ)
雪乃と別れ自室に戻ってきた元親は、まだ濡れている頭をガシガシと掻き毟った。
結局朝まで眠れず、眠気覚ましの為に水浴びをしに行ったのだが…
(…まさか雪乃に出会すとはな)
昨夜の彼女とのやり取りが甦る。
いい加減な気持ちじゃなかったとは言え、勢いで雪乃に口付けをしてしまった。
彼女の驚いた顔と、ほんのり頬を染めた色っぽい表情が脳裏に焼き付いて離れない。
そんな自分は、まるで恋を覚えたての少年のようで…
(…何考えてんだ)
出会ってからまだ間もない年下の娘に妙な感情を抱くなんて、自分自身信じられなかった。
(いや、これは違うだろ…。これは恋愛感情なんかじゃなくてアレだ、可愛い妹を持つ兄貴の気分つーか…)
では何故口付けなどしたのか。
矛盾する自分の感情に頭を抱えながら、元親はしばらくその場で唸るのだった…
(なんか頭がぼーっとする…)
昼過ぎ…
屋敷の庭を掃除していた雪乃は、箒を手にぼんやり空を眺めていた。
流石に寝不足が続いたからか、先程から頭も体も重い。
(ダメダメ、寝不足なんかで仕事サボっちゃ…!)
元々真面目な彼女は自分にそう言い聞かせ、止めていた手を再び動かし始める。
けれど…
「…っ」
突然歪んだ視界。
体から一気に血の気が引いていく感覚がし、足元も覚束なくなる。
(…倒れる…っ…)
自分の意志とは反対に傾く体。
次第に目の前が暗くなり、雪乃はそのまま意識を手放した…
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