第3章 再会と約束
*
(…夢じゃない…よね)
寝不足2日目の朝。
雪乃は昨夜の事を思い出し、布団の中で顔を赤く染めた。
元親に触れられた唇がまだ熱いような気さえする。
彼は消毒だなんて言っていたけれど…
(元親さんとどんな顔して会えばいいんだろ…)
昨夜はあの後、逃げるように彼の部屋を出て行ってしまった……彼に会うのは非常に気まずい。
けれどこのまま布団の中にいる訳にもいかず、着替えを済ませた雪乃は朝食の支度をする為部屋を出た。
(…水汲みに行かなきゃ)
桶を持って屋敷の外にある井戸へ向かう。
けれどそこには先客がいた。
「…!」
そこにいたのは、今一番避けたいと思っていた人物…
(元親さん…)
彼は上半身裸で、頭から水を被っていた。
普段から半裸に近い格好でいる為、流石の雪乃もその体には見慣れているつもりだったが、昨夜の事もあり思わず頬が赤くなる。
けれど何故か彼から目が離せなかった。
(…綺麗……)
朝日に照らされた銀髪はキラキラと輝いている。
水で濡れた逞しいその体の線もすごく綺麗で…
「……雪乃?」
「…!」
思わず見とれていると、その視線に気付いた元親が雪乃の方を向いた。
すぐにその場から逃げ出してしまいたかったが、思うように足が動かない。
「水汲みに来たのか?その桶貸してみろ」
「……、」
そう言う元親の様子はいつもと変わらない。
変に意識しているのは自分だけなのだろうか…
(それはそうだよね…)
元親は自分と違って大人の男だ。
キスぐらいどうこう思う年齢ではないだろう。
「…どうした?」
明らかに落ち込んでいる雪乃の顔を覗き込む元親。
「なんでもありません」と返せば、腕を引かれ抱き寄せられた。
「も、元親さん!?」
「…昨夜の事怒ってんのか?」
「っ……べ、別に怒ってる訳じゃ……」
「悪かったな…いきなりあんな事して」
「……、」
「けど…ふざけてしたつもりは無ぇから…」
それだけ告げると、彼は雪乃の体を放し屋敷の中へ戻っていった。
(どういう…意味……?)
.