第3章 再会と約束
「…俺ァまだ怒ってんだからな」
「…ごめんなさい」
小太郎が姿を消した後…
雪乃を自室へ連れてきた元親は、真夜中にも関わらず彼女に説教を始める。
無事だったから良かったものの、縁側で雪乃と小太郎の姿を見た時は一瞬心臓が止まるかと思った。
「…お前は危機感が無さすぎる」
「……、」
「アイツは"風の悪魔"と謳われている忍だ」
「…悪魔……?」
「雇い主の命なら、略奪だろうが人殺しだろうが何だってする」
「そんな…」
「お前を襲ったっつー男共だって確実に殺られてるだろうよ」
「…っ」
そもそも小太郎が"伝説の忍"と言われている理由…
それは、自分の姿を見た人間は例外なく殺害しているため目撃者が1人もおらず、『風魔小太郎』という忍自体本当に存在するのか謎に包まれているからだ。
そんな男が何故雪乃を助けたのかは解らなかったが、これ以上彼女を小太郎に近付けるのは絶対に危険だと元親は判断した。
「…とにかく風魔にはもう近付くな。もしまたお前の前に現れた時はすぐに俺を呼べ。いいな?」
「………」
「…返事は?」
「…はい」
(ホントに解ってんのかコイツ…)
雪乃にとっては自身を助けてくれた恩人かもしれない。
厳しい事を言っているのは百も承知だが、これも彼女を危険な目に遭わせない為。
それに…
「…お前が頼んのは俺だけでいいんだよ」
「…え…?」
雪乃の事が心配なのは確かだったが、それと同じくらい元親は悔しかった。
自分を差し置いて、彼女の手助けをしている男がいたなんて。
雪乃が未来から来た人間だと聞いた時…すぐにでも元の世界へ帰れるよう協力してやりたかったが、そんな時に限って執務業が増えてしまった。
これでも自分は一国の主。
他国の人間からは海賊業しかやっていないと思われがちだが、執務業だってひと通りこなしている。
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