第3章 再会と約束
「……、」
目の前には小太郎の顔。
一瞬何が起きたのか解らず、瞬きするのも忘れ言葉を失う。
(…なに…?今の…)
そう雪乃が呆けている時だった。
「テメェ!雪乃に何してやがる…!」
「…!」
深夜の渡り廊下に響いた怒号。
そこには正に鬼のような形相をした元親が立っていた。
「…!テメェは風魔小太郎!」
「………」
戦場で何度か見掛けた事のあるその顔。
以前会った時は、確か北条家の主に雇われていたはずだが…
「…なんでテメェがこんな所に…。つーか雪乃から離れろ!」
雪乃と小太郎の間に割って入った後、引き離すように彼女を自分の背後へ隠す。
今にも殴り掛かりそうな元親に慌てた雪乃は、思い切り彼の腕にしがみ付いた。
「ま、待って下さい元親さん!ふうまさんは何も悪くありません!」
「アァ!?」
「…っ」
恐ろしいその形相に一瞬怯んでしまいそうになったが、雪乃はこれまでの経緯を簡潔に話した。
森で助けてくれたのは小太郎だった事。
自分の代わりに私物を探しに行ってくれた事。
話を聞き終えた元親はひとまず落ち着いてくれたが、それでもまだどこか納得していない様子だった。
「…なんで黙ってた」
「…え?」
「昼間お前の様子がおかしかったから、何かあるんじゃねぇかと思って来てみれば…。なんで風魔の事黙ってたんだよ」
「そ、それは…」
困っている雪乃に助け舟を出すように、小太郎は自分が口止めしていたと説明する。
それを聞いてようやく元親は安堵の息を漏らした。
そして…
「…ったく、オメェは……」
「きゃっ…」
ぐしゃぐしゃと雪乃の頭を乱暴に撫でる元親。
知らないとは罪だ。
いくら恩人とは言え、伝説の忍とまで言われるこの恐ろしい男に気を許すなんて…
幸い、今のところ小太郎は雪乃に危害を加えるつもりは無いようだが、気紛れなこの男の事…いつ何をしてくるか分からない。
「………」
元親の誤解が解け、雪乃と彼のやり取りを見届けた小太郎は、長居は無用とばかりにその場から姿を消した…
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