第3章 再会と約束
(…あ……)
昨日とほぼ同時刻…
漆黒の羽が舞う中、約束通り小太郎が現れた。
相変わらず無表情なのでその感情は読めない。
「ふうまさん、こんばんは。あの、今日は…」
自分に何の用があるのか問おうとする前に、彼は昨日と同じく雪乃の右手を取った。
『み つ か ら な か っ た』
「……?」
初めは何の事だか解らなかったが、すぐに昨夜のやり取りを思い出す。
恐らく自分が話したネックレスの事だろう。
それを理解し、彼がわざわざあの森へ行ってくれたという事実に驚きを隠せない。
「す、すみません…!私、ふうまさんにそんな事までさせてしまって…」
そんなつもりで話した訳ではなかったが、結果的に小太郎を働かせる事になってしまった。
けれど雪乃の手助けをしたいと思ったのは小太郎自身。
申し訳なさそうな顔をしている彼女に「気にするな」と告げる。
「ふうまさん、本当にありがとうございます」
「………」
見つからなかったのは残念だが、自分の為にここまでやってくれた彼には感謝の気持ちしか無い。
「あの…私、ふうまさんに何かお礼がしたいんですが…」
「…?」
「助けてもらったお礼もまだ出来てませんし…」
とは言え、自由に遣えるお金など持っていない。
そんな自分に一体何が出来るだろうか…?
「えぇっと…ふうまさん、私に何かしてほしい事とかありませんか?」
「………」
元々見返りが欲しくて雪乃の手助けをした訳ではない。
礼など要らない…小太郎はそう告げようとしたのだが。
「私に出来る事なんて限られちゃいますけど…、遠慮せず何でも言って下さい」
「………」
この娘は何を言っているのか。
男である自分に「何でもする」などと、危機感が無いにも程がある。
(…いい加減、ここはひとつ灸を据えてやらねばならぬか)
小太郎の言葉を待つ期待に満ちた瞳。
彼はそっと、その柔らかい頬に手を添える。
そして…
「…!」
チュッと音を立て、彼女の唇……のすぐ横に口付けをした。
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