第3章 再会と約束
「…ふわぁ」
翌日…
昨日遅くまで縁側にいた雪乃は完全に寝不足だった。
掃除洗濯など午前中の仕事を終わらせた後、欠伸をしながら自室へ戻る。
(ふうまさん…今日も縁側で待ってろって言ってたけど…)
まさか今頃、雪乃の代わりにネックレスを探してくれている事など彼女は知る由も無い。
しばらく机に向かって考え事をしていた雪乃だったが…いつの間にかうとうとし始め、気が付けば静かに寝息を立てていた。
…と、そこへ。
「雪乃、いるかー?」
部屋の外から声を掛けてきたのは元親。
中から何の反応も返ってこない事を不思議に思い、ガラリと襖を開ける。
「……、」
そこには机に突っ伏して眠っている雪乃の姿があった。
その寝顔を見て起こす気にはなれなかったが、何となく部屋を出ていく気にもならず結局その場に留まる。
(…ったく、無防備な顔しやがって……)
そう思いながらも、雪乃の寝顔を見つめる元親の瞳は優しいものだった。
初めは不安や緊張で表情の固かった彼女だが、最近はよく笑うようになった気がする。
屋敷の手伝いもよくしてくれているので、元親やその部下たちも助かっていた。
一部の部下は、雪乃を本気で元親の嫁にしようと目論んでいるくらいだ。
(ホント健気なヤツだよなぁ…)
右も左も分からない世界で不安なはずなのに、それを悟られまいと一生懸命な彼女。
弱音を吐かない彼女だからこそ、力になってやりたいと思う。
「…ん……」
一瞬起きるかと思ったが、雪乃は声を漏らしただけでまだ目を覚ましそうにない。
何故だか元親は、その寝顔から目が離せなかった。
白い肌に薄い桃色の頬。
伏せられた長い睫毛にふっくらとした形のいい唇。
全てが自分のものとは違い、いつまでも眺め続けていられる。
(…って、変態かよ俺は)
そう呆れながらも、屋敷のどこからか「アニキー!」という自分を呼ぶ声が聞こえるまで、彼はしばらく雪乃の傍を離れなかった…
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