第3章 再会と約束
「あの…私、ふうまさんにお聞きしたい事があって…」
「…?」
「私を助けて下さったあの森の場所です。ここからどうやって行けばいいんでしょうか?」
「………」
予想外の質問だった。
彼女にとってあそこは鬼門とも言える場所のはず。
それなのにまたあの森の中へ入ろうと言うのか。
「私…あそこで大事な物を落としてしまったかもしれなくて…それを探しに行きたいのと…」
「………」
小太郎は再び彼女の右手を取った。
『な に を お と し た』
小さな手の平にそう綴る。
すると彼女は、「ネックレスです」と答えた。
(ねっくれす…?)
小太郎の頭にはてなマークが浮かぶ。
その様子を見て通じていないと気付いた雪乃は、彼にも解るように慌てて言い直した。
「ええっと…首につけるアクセサリー…じゃなくて、首飾り…って言うんですかね…」
という事は恐らく装飾品の類いだろう。
恋人からの贈り物だろうか?
「………」
何となく面白くないと思いながらも、今まで抱くはずも無かった小太郎の中のお節介精神に火が点く。
『あ す の よ る ま た こ こ で』
「…え?」
『お れ の こ と は だ れ に も は な す な』
その真意は解らなかったが、明日の夜またこの縁側で待っていろという事と、小太郎の事を他人に話すなと言われた事だけは理解出来た。
雪乃がこくりと頷くのを確認した後、彼は真っ黒な羽を残しその場から姿を消した。
あの森へ向かう為に…
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