第2章 屋敷での生活
(うーん…困った……)
湯浴みを終えた雪乃には新たな試練が待ち受けていた。
…着物だ。
浴衣や袴を着た経験は何度もあるが、本格的な着物を着た事は一度もない。
当然着方など分かるはずもなく…
(…颯くんに頼んでみようかな?)
彼は呉服屋の息子だと言っていた。
いくら年下とはいえ、男の子にお願いするのは恥ずかしいが、どちらにしてもここには男性しかいないのだから仕方ない。
何とか肌襦袢と長襦袢を身に付けた雪乃は、着物を手に颯の部屋へと急いだ…
…のだが。
「雪乃!お前、なんつー格好してんだ!」
「…!」
その途中で元親に出会した。
雪乃の格好を見た元親は慌てて彼女の手を取り、一番近くにあった部屋へ入る。
「…ったく、ここの野郎共が気のイイヤツらだからっつっても男なんだぞ!?そんな格好でウロウロしてたら何されても文句言えねぇからな!?」
「す、すみません…」
まさかここまで怒られるとは思わなかった。
着物の着方が分からない事と、颯にお願いしようと思っていた事を伝えると、元親はハァ~と大きな溜め息をつく。
「お前な…いくらなんでもアイツには荷が重すぎんだろ」
「でも颯くん、呉服屋の息子だって聞いて…」
「…そういう問題じゃねぇ。年頃の男に何させる気だお前は」
「え…?」
「…何でもねぇよ。いいからそれ貸せ」
元親は少し強引に雪乃から着物を奪うと、それを彼女に羽織らせた。
「元親さん、着付けできるんですか?」
「…まぁな」
(ガキの頃『姫若子』なんて呼ばれて、女物の着物を着せられてたなんて口が裂けても言えねぇ…)
.