妖精の夢~Another Story~【気象系BL】
第7章 Miracle of the Red Fairy
「翔君…こ、これで…満足なの?」
「ぐはっ!!ちょっ…智…それ反則…!!」
智は、経験したことのない羞恥心に耐えながら、
今 この場に立っている。
目の前の翔は、
そんな智の気も知らないで
ニヤけながら床に倒れこんだ。
智は、久しぶりに逢えたのに…
翔の願いって…
本気で厭きれていた。
そして……
今すぐにでも、蹴り飛ばしたい衝動を
グッと抑えていた。
それも当然……
智は、翔のコレクションのメイド服を着ているのだ。
黒のワンピースに、フリルのついた白いエプロン。
頭にはリボンのついたカチューシャに、
下は同じくフリルのついたニーハイ。
もちろん、智は好きで着ているわけではない。
翔に頼まれて、仕方なく……
この誕生日の奇跡に……
お詫びの品なら…
『メイド服になった智が見たい……』
本当に厭きれるぐらいバカな事を言ってきたのだ。
いつもなら絶対に
即却下するところだけど……
翔の…
「こんな奇跡二度とないかもしれないんだよ…
俺の夢なんだよ…
今日はカズかいないから…
智…
お願いだよ…」
余りの真剣な顔に
智は「わかったよ…」っと返事をしてしまったのだった。
そして
それを…今になって物凄く後悔している。
「き、気が済んだ?
……もう脱いでいいよね…」
「あー!!待て待て!!」
そう言って……
ファスナーに手をかけようとした智を、
全力で止めたのは翔。
「なんだよ、約束は果たしただろ」
「…いや。
だって普通に考えて……
このまま終わらせるわけにはいかないだろ」
翔は言い終わる前に智の手を取り、
そのまま床に押し倒した。
「ちょっ…こんな約束…してないって…!!」
「いやいや。
智はまだ…
メイドとしての役割を果たしてないだろ?」
「僕はメイドじゃない!!」
「じゃあこの格好は、何?」
「っ…これは…翔君が…」
翔はメイド服の裾を掴み、妖しく笑った。
智は思った……
ヤバイ……
主導権を、握られた…