第2章 俺が古くなった本を繰り返し読み続ける理由【リヴァイ】
「お昼ご飯にでもしましょうか。お腹すいたんじゃないですか?」
裁縫を一時中断して、が顔を上げて俺を見た。
「いや、まだ見てるからいい。腹も減ってねぇ。」
「本当に好きですね。飽きないんですか?」
飽きもしないで、はそう言って、クスクスと笑う。
そしてまた、調子外れの鼻歌をこぼしながら、得意の裁縫を始めた。
今日の朝は、は、庭にやって来た鳥の名前を間違えて覚えていて笑わせてもらった。
昨日の夜は、揺れたカーテンを幽霊と間違えて悲鳴を上げたときに、知らない名前を叫んだ。
誰の名前かと訊ねれば、昔飼っていた犬の名前だと教えてくれた。
子供の頃は、その犬が、をいじめっこから守ってくれていたのだそうだ。
を見ていると、本当に飽きない。
長い月日を一緒に過ごしているのに、俺にはまだの知らないことがきっとたくさん残っているのだ。
何度も何度も同じ本を繰り返し読む度に、新しい発見があるように、俺は穏やかな日々の中で、の新しい一面を知っていく。
それが嬉しくて、仕方がない。
そして、明日はどんなを知れるのだろうかとワクワクするのだ。
長い月日の流れには逆らえず、色褪せていく本のページと白くなっていく俺達の髪とは対照的に、を包む空気は、日を追うごとに色鮮やかな輝きを増していく。
たぶん——、いや、きっと、俺は今も、に恋をしている。
初めて会った、あのときからずっと変わらずに——。
「なぁ、。」
「ん?やっぱり、お腹すきました?」
が顔を上げて俺を見た。
首を傾げるその仕草は、何度見ても愛おしい。
「やっぱり、皴が増えたな。」
「お昼ご飯抜きです!」
が怒るから、俺は笑う。
【なぁ、俺は君が大好きだ。
あの頃と変わらず可愛くて、いつだって今が一番美しいよ。】
—fin—