第10章 雨が上がった、やっと君に会えたよ【リヴァイ】
≪昼間は晴れていたのに、夜空は分厚い雲に覆われて、土砂降りになっていた。
傘に落ちる雨が、リヴァイさんを想って鼓動する私の心臓を叩いているような気がして、息が苦しくなる。
今夜、リヴァイさんに初めて誘われた。
向かい合って話していても、リヴァイさんはいつもどこか遠くにいて、私の向こうをぼんやりと見ている。
そこに誰がいて、その人はどんな顔をして、リヴァイさんを見つめ返しているのか、私には分からない。
私の気持ちに気づいていて、リヴァイさんが私のそばにいてくれる理由も、知らない。
とても愛おしそうに私に優しいキスをしてくれるのに、唇が離れた途端に、後悔したような顔をする理由も、泣きだしそうに眉をしかめる理由も、私は何も知らない。
気にならないと言ったら嘘になるけれど、聞き出そうとも思わない。
ただ、もしも、リヴァイさんが知って欲しいと思った時には、私はしっかり受け入れたい。
それがどんなに残酷で、どんなに私を傷つけても、私はそのすべてを赦して受け入れたい。
だって、この残酷な世界で、人類最強の兵士と謳われながら、大きな荷を背中に乗せて戦っている彼を、私はほんの少しでも癒す存在で、いたいから。
「今夜も、雨かぁ…。それも土砂降りって…、なんか不安。」
道の真ん中で立ち止まり、私は傘の向こうの夜空を見上げた。
土砂降りの雨を降らせる夜空は、覗かれるのを怖れているかのように、一寸先も見えない闇を広げている。
いつもなのだ。リヴァイさんに会った日の夜は、必ず雨が降る。
それはまるで、泣けないリヴァイさんの代わりに夜空が泣いてくれているようで、私はいつも胸が引き裂かれそうになる。
彼は、どんな悲しみを抱えているのだろう。
ひとりぼっちで、どれほどに深い悲しみを————。≫