第10章 雨が上がった、やっと君に会えたよ【リヴァイ】
俺が、いくら誘っても会いに来てはくれないペトラをひたすら待ち続けていたとき、も俺が一歩踏み出すのを待っていたのだろうか。
何も知らないままで、何も聞こうともしないで、ただひたすら、ひとりぼっちで。
もしかすると、俺の作り笑いに気づきながら、俺のことを〝優しい人〟だと微笑みながらすべてを許すように包んで、身勝手で我儘なキスを受け入れていたのかもしれない。
「でも、今はもう、伝えたいことはひとつしかない。」
俺は、の頬に手を添える。
一瞬だけ、最期に触れたペトラの頬の冷たさを思い出した。
俺は、ペトラを愛していた。
照れ臭くて、恥ずかしくて、俺のことを何でも理解してくれていたペトラには言わなくたって伝わっていると知っていて、結局、終には最期まで伝えられないままだったけれど、本当に本当に心から、彼女を愛していた。
愛していたのだ、彼女を。
俺は、愛していた————。
「————愛してる。」
耳に届いたのは、自分でも聞いたことのないような柔らかくて優しい声だった。
そして、いつも冷たくて何を考えてるか分からないとハンジにもよく言われる俺の目が、細く緩んで、目尻が下がったのが分かった。
が、ゆっくりと、ゆっくりと目を見開いていく。
そして、潤んだ瞳から、大粒の涙がひとつ、またひとつ、と零れていった。
その涙を拭うように瞼を指でそっと撫でてやれば、俺達はとても自然にそっと瞳を閉じた。
そして、ゆっくりと、でも必然的に、唇が重なる。
『リヴァイ兵長は、冷たく見えるけど、本当はすごく優しい人。
だからみんな、兵長についていきたいと思うんですよ。』
不意に、優しいペトラの声が蘇った。