第10章 雨が上がった、やっと君に会えたよ【リヴァイ】
「ただの、雨だ…!」
そう、ただの雨だ。
土砂降りの雨が降っていただけなのだ。
だから俺は、びしょ濡れになっていただけ。
そう、ただの雨。雨だ。いつだって、雨が降っていただけだった———。
「そうですか。」
フッと春風が吹くような、柔らかい息遣いだった。
は、とても優しくそう言うと、俺を包むように抱きしめた。
「よかったです。
自分のせいで、大切な人が泣いていたら、とても悲しいですから。
ただの雨でよかったです。」
「…っ、あぁ、そうだな…っ。
ただの雨だ。ただの雨で、よかったっ。」
柔らかく包むように抱きしめるを、俺は縋るように強く強く抱きしめ返した。
しばらくそうした後、俺はゆっくりと身体を離した。
そして、の温もりを出来るだけ近くで感じられるように、柔らかいベッドに深く腰かける。
俺はそうして、初めて、と向かい合ったのだ。
「今夜、を俺の部屋に誘ったのは、伝えたいことがあったからだ。
伝えたいことが、たくさんあった。
俺のことで、知ってもらわねぇといけないことが、たくさんあったんだ。」
「はい、リヴァイさんはいつも、何かを言いたそうにしていたから
知っていましたよ。」
は、見慣れた柔らかい笑みは見せなかった。
でも、声色はとても柔らかくて、たとえば、母親が我が子に向ける愛情というのはそういうものなのだろうかと思ってしまうほどに優しかった。