第10章 雨が上がった、やっと君に会えたよ【リヴァイ】
そして、いきなり部屋に飛び込んできて、名前を叫んだ俺に、見慣れた大きな瞳をさらに大きく見開いて、目を丸くした。
(よかった…っ。)
気づけば、俺はに飛びつくようにして、抱きしめていた。
縋りつく———という表現の方が正しいかもしれない。
の腰を抱きしめる腕と、胸元にうずめた頬から伝わる温もりと柔らかさが、が生きている事実を俺の身体と心にしみこむように改めて実感させてくれる。
は、生きている。
死んでない。
ちゃんと、生きている。
死んでなんか、いない———。
「リヴァイさん、どうしたんですか?
何かあったんですか?」
まるで空を舞う花のように俺の頭上に落ちてきた柔らかい声は、我を失って狂いそうになっている男の心配をしていた。
自分が事故に遭ったというのに、病院に運ばれたというのに、気の抜けたその声に、俺は少しだけ脱力して、安心もしたのだ。
そういえば、ペトラと同じだと思っていた細い腰は、日々の訓練に励んで筋肉質になっていた彼女よりもずっと華奢で細くて、想像していたよりも柔らかかった。
「何かあったじゃねぇよ。が事故に遭ったんだろおが。
心配させやがって。」
顔を上げて、俺はを叱った。
安心したからなのか、それとも、別の理由があるのかはわからないけれど、俺の声は震えていた。
だからだろうか。
目が合ったは、小さく目を見開いた後に、ひどく傷ついたように眉尻を下げたのだ。
「リヴァイさん、泣いてるんですか…?」
の手が、俺の左頬に添えられた。
柔らかい温もりが、濡れて冷たくなって強張っていた俺の頬を優しく暖めようとしているみたいだった。
「バカか…!」
俺は、左頬に添えられた手を上から包むように握りしめた。
少し、いやだいぶ、には痛かったかもしれない。
でも、俺は強く、強く、力の限りに強く握ったのだ。