第10章 雨が上がった、やっと君に会えたよ【リヴァイ】
今夜、会えないか———。
そう言えば、は、少しだけ頬を染めて、でも嬉しそうに頷いた。
を兵舎の俺の部屋に誘ったのは初めてだった。
エルヴィンに頼まれて、この残酷な世界を戦い抜いた同志達に手向ける花を買いに来たついでにするようなことではなかったと思う。
でも、エルヴィンもそれをわかっていて、俺をの働く花屋へ行かせているのだから、多少は許されるはずだ。
初めてに会ったのも、この花屋だった。
女型の巨人に無残に殺された仲間達の———、ペトラの為の花を買いに来た俺に、は柔らかく微笑んだのだ。
それが、ペトラの笑みと重なって、ペトラを思い出させて、と一緒にいるとペトラがそばにいるみたいで、気づけばこの花屋に通うようになっていた。
何をしていても、どこにいても、俺はペトラを思い出す。
この世界に生きていると、すべての景色がペトラに繋がっているのだと嫌でも思い知らされる。
そして俺は、忘れたいと願いながらも、の気持ちが自分に向いているのを良いことに、ペトラの面影を持つ彼女に、癒されようとしているのだ。
「大切な人たちのために、兵長さんがお花を買いにいらっしゃるなんて、
リヴァイさんは、本当にすごく優しい人ですね。」
が、ふわりと微笑む。
ペトラを蘇らせる柔らかい笑みで———。
「そうでもねぇさ。」
ズキリと痛んだ胸を誤魔化すように、俺はの頬に手を添えて口づけた。
こんな俺のどこが〝優しい人〟だろうか。
死んだ恋人のことを忘れられないまま、彼女の面影を重ねて、こうしてキスをすることができる薄情な男のどこが———。