第2章 俺が古くなった本を繰り返し読み続ける理由【リヴァイ】
たくさんの仲間や大切な人達を天国、もしくは地獄へと見送り続けて、俺はこのままもう死ぬまで独り身で生きていくのだと信じて疑わなかった。
そんな俺が、初めて結婚を意識した。
だから、退院してすぐにプロポーズをした。
戦争が終わったばかりで金もない俺に用意できた花なんて、病院の庭に咲いていたマーガレットくらいしかなかったが、は泣いて喜んでくれた。
今でもあのときのマーガレットは、押し花にして壁に飾ってある。そして、は、気が付くとマーガレットを見つめて、プロポーズをした時の話を始めるのだ。
恥ずかしいからやめてくれと言う俺だけど、『生きてきた中で最も幸せだった瞬間のひとつだから。』と嬉しそうに微笑むの顔は可愛くて、何度見ても飽きない。
それから、俺はの両親に結婚の挨拶をしに行った。
『お前なんかにうちの娘はやらん!』
の父親は、俺を見るなり突き放した。
どうしても結婚は許してもらえなかった。
それも仕方がないと、あの頃も今も理解している。
だって、あのときはまだ戦争が終わったばかりで、世の中は混乱と欺瞞、不安に溢れていた。
そんな世界で、俺とが結ばれることを喜んでくれるのなんて、頭のおかしい眼鏡の奇行種くらいなものだ。
仕方がない。
愛する人や共に生きていく伴侶を選ぶことは出来ても、生まれてくる場所や血は選ぶことは出来ない。
俺はアッカーマン一族の血を引くエルディア人で、はマーレ人だったのだ。
それでも、は、両親が嫌ったアッカーマンという姓を、一生名乗りたいと思うほどに愛してくれた。
だから、どうしてもと結婚したい俺は、彼女を連れて逃げた。
そして、俺達は、逃げて、走って、逃げて、走って、駆け落ちをした。
そして辿り着いたのは、この小さな家だ。
料理は得意でも、裁縫は苦手だったは、慣れない仕事を始めた俺を必死に支えてくれた。