第2章 俺が古くなった本を繰り返し読み続ける理由【リヴァイ】
暖炉で薪がパキパキッと燃える音と共に、穏やかな時間が過ぎていた。
古い肘掛椅子に腰かけて、俺は本を読んでいる。
何度も何度も同じ本を読んで飽きないかと可笑しそうにクスクスと笑ったも、揃いの古い肘掛椅子に腰かけて、お得意の裁縫で小さな帽子を編んでいる。
俺が本のページをめくるときに出る掠れた音、それから、聞き慣れてしまったの調子外れた鼻歌が聞こえる何の変哲もないこの生活が、俺にとってはこの上ない幸せだ。
俺がと出逢ったのは、マーレとの戦争が終わってすぐの頃だ。
彼女は兵士達が収容された病院で働いている看護師で、俺は大怪我を負った兵士だった。
初めてと目が合ったときのことを、俺は今でも鮮明に思い出せる。
『頑張りましたね。生きていてくれて、ありがとうございます。』
白衣を身に纏い、柔らかく微笑んだを見て、俺は衝撃を受けたのだ。
だって、巨人の脅威に晒され続けた狭い世界で、それなりに長く生きて来たはずだったのに、あれほど美しい女を見たのは初めてだった。
は、決して仕事がテキパキと出来る女ではなかった。
でも、マーレの兵士とエルディアの兵士が入り混じり殺伐とした病室の中で、穏やかな空気の流れを運んでくれたは、あの病院で咲いた一輪の花のような存在だった。
心にも身体にも大きな傷と苦しみを負い、癒しを求めていた兵士の何人もが、彼女に恋をしていたのを俺も知っている。
だって、俺もその中のひとりだった。
でも、他の誰よりもに心惹かれたのは俺だったと、今でも自信を持って言える。
それから俺達は、とても自然に、まるで初めからそうなることが決まっていた運命だったかのように、恋人という関係になった。