第9章 What if you get scared I'll …
「好きだ。」
君を兵舎の屋上に連れ出した満月の夜、俺は、ずっと心の内に秘めていた気持ちを打ち明けた。
夜の闇を照らし出す淡い月明かりが、今夜は君の為だけに輝いているように見える。
だって、俺を見つめて頬を染める君は、俺が見た中で、一番綺麗だ。
俺は、君が欲しい。
君に、俺だけを見て欲しい。
でも、受け入れてもらえるか、正直、自信はない。
自惚れてもいいような気もするけれど、ひとりで想い続ける月日が長すぎたんだと思う。
でも、そろそろ君も気づいていい頃だ。
まだ新兵に毛の生えた程度の調査兵だった頃、上官に叱られて落ち込む君の愚痴や弱音を夜が明けるまで聞いていたのは、俺だ。
君に嬉しいことがあったとき、一番最初に声をかけていたのだって、俺だったはずだ。
それが俺にとっては耳を塞ぎたいもので、他の男との惚気だって、君のそばにいられるならよかったんだ。
君に悲しいことがあったとき、一番最初に気づいてやれていたのも俺だった自信がある。
毎日、ほんの一瞬の隙すら逃さずに、君を見守っていたのは、俺なんだ。
厳しい訓練についていけずに、これでは仲間の命を守れないと悔しがる君の、訓練よりも厳しい自主練に付き合えるのも、俺くらいだろう。
君が大好物だと友人達に話している紅茶は、俺が淹れたやつなんだろう?
ハンジやエルヴィンから、何度だって聞いたことがあるよ。
それに、気づき始めていたから、最近、君は俺の隣で、らしくない顔をして、逃げようとしたり、俺が不意に背を向ければ追いかけてきて、俺が他の女と話しているのを見ると、泣きそうな顔で目を反らしたりしていたんじゃないのか。
「ごめんなさい…。気持ちは、嬉しいし、リヴァイが悪いわけじゃない。
ただ…。ただ、私はもう、誰の恋人にもならないって決めたの。」
何度か、何かを言いたそうに口を開いたり閉じたりした後、君はひどく悲しそうに目を伏せた。