第8章 5文字の君の名前【リヴァイ】
『愛してる———。』
そう告げる代わりに、心とは真逆のことを口にしてしまう。
「俺は、を幸せにはしてやれねぇ。
距離を置いた方がいい。」
重なっていた手を離した。
途端に寂しくなって、俺は、を抱き寄せる。
細い腰を強く抱けば、生まれたままの姿の俺達は、肌が触れ合って、重なる鼓動が、どちらのものか分からなくなる。
言葉とは裏腹の俺の行動を、一番理解出来ないのは、俺だ。
でも、どうすればいいというのだろう。
『愛してる。』
たったの5文字で気持ちを伝えることが出来るというのに、俺には、それが、この世で最も言葉にするのが難しく思えるのだ。
それなのに、彼女は、俺を抱きしめ返して、ひどく甘い戯言でとかすから————。
「それなら、もっと近づいて、ひとつになってしまいましょう。
そうすれば、リヴァイさんの幸せも不幸も、私のものですから。」
俺は抱きしめた。強く、強く、彼女を抱きしめた。
そうすることで、ひとつになってしまえるのなら———。
目を閉じると、俺はいつも暗闇に包まれて、世界にただひとりきりで投げ出されてしまったような気がして、大嫌いだった。
でも今、目を閉じると、俺にはいつも彼女の姿だけが見える。
だから俺は、ひどく安心して、幸せな夢を見られる気がするのだ。
これだけは、彼女に伝えておいた方がいいだろうか。
俺の心にいるのは、君だけなんだと————。
【君の名前の意味を『愛してる』に変えてしまえたら
俺はきっと、生涯で誰よりも、君に『愛してる』と言える男になれるのに】
せめて、君の名前を呼ぶときには、心の限りの愛してるを乗せるから
—fin—