第1章 俺の芝生はいつもどこよりも青い【リヴァイ】
今はもう、壁の外にある新しい世界に、もっと素晴らしい景色があるかもなんて思わない。
だって、この世界のどこを探したって、を見つめる以上に素晴らしい景色なんて存在しないから。
見たこともない世界を探すために、壁の外で命と心を削るのは、正直苦しかった。
でも、に出逢った日、もうそんなことはしなくても、俺の欲しいものはここにあるのだと知った。
そして、俺はやっと、探すことをやめられた。
心が解放されるのを感じたあの喜びは、言葉ではたとえられないほどだ。
壁の外にどれほど広い世界が待っていようが、そこにどんな素晴らしい贅沢品や美味しいものが溢れていようが、俺にとっては大した意味はないのだ。
だって、俺の心を動かして、躍らせるものは、しかいないから。
俺が生まれた意味も、人生をかけて探すべきだったものも、すべてが、狭い壁の中にある小さなアパートの一室にある。
さえいれば、他には何も要らない。
「早く、お前に会いたかったってことだ。」
「私も、会いたかったよ。リヴァイがいなきゃ、この家は空っぽだから。」
「あぁ、そうだな。俺も、お前がいないと空っぽだ。」
「一緒だね。」
「一緒だな。」
どちらからともなく、まるで、前世からそうすることが決まっていたみたいに、俺達は口づけを交わす。
柔らかい唇の感触と、腕の中にある温もりを感じる度に、俺は、世界が平和になったように感じるんだ。
間違いが正されて、歪んでねじれてしまった心も真っすぐになって、全てが正しい方向へ歩き出す————そんな気がして、ひどく安心する。
壁の中にあるこの小さなアパート、俺のいるこの場所こそが、世界で一番素晴らしい場所なんだって、誓うよ。
【俺の生きる世界はどこよりも素晴らしいんだ
だって、君が笑うだけで、太陽が輝くから】
—fin—