第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】
でもすぐに、の瞳が傷ついたように揺れたのに気づいて、ハッとした。
どうして、また同じ過ちを繰り返すのか。
最後だというのに、俺はまたー。
「そうだね、ごめんね。でも、リヴァイの身体が心配なだけなんだよ。」
「…悪い。それも、分かってる。
ちゃんと、分かってた。」
「うん、それも知ってたよ。
それなのに、グチグチ文句ばっかり言って、面倒くさい彼女でごめんね。」
「そんなこと思ったことはねぇ。」
少し早口で言った。
本当なのだ。面倒くさくて、どうしようもない態度をとっていただけで、が口うるさく小言を言う理由は、ちゃんと分かっていた。
から愛されていた証だったのだということも気づいた。
だから、ちゃんと分かってほしくてー。
「そっか。それならよかった。」
ふわりと微笑んだが、本当に分かってくれたのかは分からなかった。
でも、それも、もういいのかもしれない。
最後にこうして、笑顔で別れることが出来るのなら、俺達が出逢って恋をして終わったことは、間違いではなかったということなのだろうから。
が、見たこともないような明るい笑顔を俺に向けた。
俺はそれを、受け入れる。
「じゃあ、さよなら。」
「あぁ。じゃあな。」
短く言った俺は、まだ一緒にいたいと叫ぶ心に、もう無理だからと言い聞かせながら背を向けた。
バスが来ているのは遠くに見えていた。
あのバスは、を俺のいない世界へと運んで行くのだ。
それでいい、それがいい。
そう思い込もうとして、両手で顔を覆った途端、のお気に入りの香水の香りがした。
今朝、未練がましくの香水を手首につけたのを忘れていた。
の匂いに包まれた途端、楽しかった思い出とか、悲しかったこと、に直して欲しかったこと、大好きだったところとか、今さら苦しいくらいに愛おしい想い出になって一気に溢れた。