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【進撃の巨人】Short Story

第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】


見慣れた通りを手を繋いで歩いたのは、何度目だろう。
覚えていないくらいに何の変哲もない日の方がきっと多くて、俺はきっともう二度と思い出せないのだと思う。
どうして、隣にいるときにもっと大事に出来なかったんだろう。
今さら後悔して、あの日々の愛おしさに押し潰されそうだった。
そんなことを考えていると、まるで、私もだと言うようにが握る手に力を込めた。
思わず、俺も握り返したら、キュッと胸が苦しくなった。
もしかして、俺と同じように、も寂しいと思ってくれているのだろうか。
心の奥ではそうであってほしくて、気持ちとしては違うことを願った。
別れたのに手を繋いで歩いているなんて、俺達らしくない。
決して近くはない距離を無言で歩くのは初めてだ。
何か話して欲しいと思っているうちに、すぐそこにバス停が見えて来た。
相変わらず、あっという間に着いてしまう短い距離に、懐かしい寂しさが胸に込み上げた。
帰したくないー。
そう言って、を抱きしめて初めて家に連れ込んだあの夜は出来たことが、今できないわけがない。
あれだって俺だったのだし、きっと今も出来る。
行くなー。
そう言えばいいだけだ、そう決意した俺を笑うように、が笑顔を浮かべた。

「じゃあ、送ってくれてありがとうね。」

清々しそうな笑顔に、喉の奥でくすぶっていた言葉は勢いを萎ませて、消えていく。
同時に、握りしめていた手も離れた。
あの頃の俺と今の俺は同じでも、目の前にいるのはあの頃のじゃない。
そんな単純なことに、俺はどうして気づかなかったのだろう。
今だけの感情に心を揺らされて、前を向いて歩きだしたの邪魔をしたらいけない。
そもそも俺達は、別れるのがお互いにとって一番いいと考えて、別々の道を選択したのだから。

「元気でね。」
「お前もな。」
「コンビニのお弁当ばっかり食べてちゃダメだよ。
 たまにはちゃんとしたもの食べるんだよ。」
「分かってる。相変わらず、うるせぇな。」

最後だというのに、またそれかー。
思わずイラッとして、面倒くさそうに返した。
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