第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】
一緒に何度も通った狭い通りを、送らなくてもいいと断ったと歩いていた。
隣に並んですらもらえない俺は、少し斜め後ろにいるの気配を感じながら、送ると言ったことを後悔しそうになる。
少しでも時間を稼いで、やり直すきっかけを探そうとしたけれど、そもそもそんなものなんて本当にあるのか。
俺には、どうして別れてしまったのかすら分かってないのだ。
思い返してみても、特別な理由なんて思いつかない。
たぶん、電池切れの時計みたいに徐々にズレて行って、最終的に取り返しがつかなくなったのだ。
電池を取り返れば、また時計の針は動き出すのだろうが、俺は、今でも止まった時計を大事に抱えて立ち尽くしてる。
たとえば、俺達の別れに明白な理由があれば、解決策だってあって、やり直せることもできるのかもしれない。
でも、好きという気持ちが蜃気楼みたいに色褪せてしまったの心を取り戻す方法なんて、もうない。
全部、俺のせいだ。
もう諦めようと思っていたら、が隣に並んだ。
でも、想い出が詰まって重たくなったトートバッグが、俺との間を阻んでいた。
「貸せ。持ってやる。」
の持っている黒いトートバッグを顎で指す。
「いいよ、そんなに重たいものでもないし。」
「いいから貸せ。」
強引に押しつけるように言って、の手から黒いトートバッグを乱暴に奪った。
そうすれば、いつも繋いでいたの右手がフリーになったのが目に入った。
俺は、黒いトートバッグを右肩にかけて、の手を握った。
が驚いたような気配と視線を感じたけれど、顔は見れなかった。
(相変わらず、小っせぇな。)
久しぶりに握ったの手は、柔らかくて、すぐにでも壊れそうなくらいに脆く感じた。
この小さな手で、頑固で自分勝手な俺をいつも支えてくれていたのだと思うと、胸が張り裂けそうだった。