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【進撃の巨人】Short Story

第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】


「悪い。もう熱くねぇから大丈夫だ。」

ズボンの上から足に触れるの手を退けて、俺は、割れた破片を拾うためにしゃがみ込んだ。
それならよかった、とはホッとしたように微笑む。
どうして、そんな風に優しくするのだろう。
俺はもうずっと、に優しくてやれなかったのにー。
今だって、焦って紅茶を零してしまうダサい男で。
格好良く引き留めることもできない。
そんなことを考えながらティーカップの破片を拾っていれば、が割れた破片に手を伸ばした。

「触るな…!」

思わず怒鳴るように叫んで、の手首を掴んだ。
ハッとしたときには、は怯えたように固まっていた。

「悪い…。」

目も見ずに言って、手を離した。
どうして、いつもこうなのか。
ただ、怪我をさせたくなかっただけなのにー。

「ううん、いいよ。大丈夫。」
「俺が1人でやるから、お前は座って待ってろ。」
「でも、一緒に片付けた方が早いよ。」
「危ねぇだろ。おれのせいで、名前に怪我させるわけにはいかねぇ。」
「大丈夫なのに…。でも、分かった。」

はそう言うと、タオルを持ってくると言って立ち上がった。

「助かる。ありがとな。」

すぐに洗面所へ駆け出したには、俺が緊張しながら言った感謝の言葉は聞こえただろうか。
恋人になってから、に礼なんて言ったことがあっただろうか。
少なくとも最近は、どうせ何かを言ったとしても、返ってくるのは文句ばかりだと決めつけて、会話もろくにしなかった。
俺の返事は短くなるから、次第には話しかけることすらしなくなった。
一緒にいても、背中合わせで言葉も交わさない。
それのどこが、恋人同士だったんだろう。
俺達は、別れるよりもずっと前から、もう赤の他人よりも遠い存在だった。
好きだから、分からなかった。
どうすればいいのか。どうしてやれば、うまくやれるのか。
でも今、好きだから、気づいてしまった。
俺はの目を見て、気持ちを伝えればよかったのだ。
ごめん、ありがとう、こっちを向いて、それから、好きー。
伝えるべき言葉は、たくさんあったのに、今でもそれらは俺の喉の奥でくすぶっているまま出てくる気配はない。
だって、伝えたとしたって、どうせ、今さらだからー。
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