第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】
飲みたくもない紅茶の入ったティーカップと読みもしない文庫本を持って、俺はリビングのソファでぼんやりしていた。
やり直したい、そう言ったらはどんな反応をするのだろう。
そればかりが頭の中でグルグルしていて、離れて行かない。
今さら、苦しいくらいにに惚れていたのだと気づく間抜けな上に、気持ちを言葉にする勇気すら持てない弱虫だ。
そんな男じゃ、きっとまた同じ過ちを繰り返すだけなのにー。
洗面所の方へ行っていたがリビングに戻って来たのに気が付いて、顔を上げた。
が持つ黒いトートバッグはそこそこ膨らんでいて、そんなにたくさん、俺の家にの欠片が残っていたのかと驚いた。
「終わったか。」
「うん、もう大丈夫。あ、歯ブラシ、捨ててもよかったのに。」
困ったように言うに、胸がズキンと痛んだ。
「あ~…、俺のを新しいのに換えるときに捨てればいいと思って
そのままにしてた。」
「だろうと思ったよ。リヴァイって本当に面倒くさがりだよね。」
相変わらず、は呆れた様に苦笑する。
の前で俺は、どんな恋人だったのだろう。
いつも叱られてばかりいたから、自慢の素敵な恋人ではなかったことは、確かだ。
この家を出て行ったら、には今度こそ自慢の素敵な恋人が出来るのかもしれない。
俺との失敗を糧にして、格好つけじゃなくて、本当に格好良くて、だらしなくも面倒くさがりでもなくて、伝えるべきことをちゃんと伝えることが出来る本当に優しい男を探して、選ぶんだろう。
「それじゃ、帰るね。」
が俺に背を向けようとする。
違う誰かと歩く未来へ行くためにー。
ダメだ。やっぱり俺はー。
「待て、送って行・・・・っ。」
慌てて立ち上がったせいで、ティーカップを自分の持っていた文庫本に当てて落としてしまった。
俺のズボンの膝のあたりを零れた紅茶が濡らしながら、ティーカップが床に落ちて割れた。
「大丈夫…!?」
慌ててバッグからハンカチを取り出したが、俺の膝のあたりを拭いてくれた。
本当に久しぶりに、が俺に触れた。
緊張して、情けなくて、泣きたくなった。