第1章 俺の芝生はいつもどこよりも青い【リヴァイ】
「いいなぁ、リヴァイは。いろんな素敵なものが見れて。」
たくさんの土産物を抱えて、が少し目を伏せて口を尖らせる。
羨ましいという感情に、自分の知らない世界を知ってしまった俺への寂しさも混じっているのかもしれない。
だから俺は、を優しく抱きしめた。
「いつか必ず、も連れてってやるさ。」
「約束だよ?」
「あぁ。約束だ。」
「ふふ、楽しみ。」
が嬉しそうに綻ばせる。
壁外に出て、俺が手の届かない場所へいく度に、はいつも不安な顔をして、俺に抱きしめられる度に『安心する。』と嬉しそうに言う。
でも、華奢な身体を包み込んで、安心するのは、俺の方なんだ。
きっとそんなこと、彼女は知りもしないのだろうけれど。
「ねぇ、リヴァイが見た中で、一番素敵だったものって何?」
俺の腕の中で、が大きな瞳を輝かせて訊ねてくる。
そんな質問、きっと、以外の俺を知る仲間達はしようともしないはずだ。
だって、答えは、分かりきっている。
「。」
「え?」
「俺が見てきた中で、一番良いもんは、だって言ったんだ。」
俺が抱きしめる腕に力を込めれば、は頬を染めた。
そして、それが恥ずかしかったのか、隠すように目を伏せて、困ったように言う。
「リヴァイって、時々、急にそういうこと言うから、ビックリしちゃうよ。」
「聞かれた質問に答えただけだ。」
「…なら、私が知ってるこの世で一番素敵なものは、リヴァイだよ。」
「へぇ、そりゃ光栄だな。」
「あー、信じてないやつだ。」
「仕方ねぇだろ、それはありえねぇから。」
「なんでよ。」
「だから言っただろ、この世界で一番なのは、お前だって。
マーレでたくさんのものを見て来て、確信した。
俺の欲しいもんはすべて、この家にあった。」
「もう。何それ。」
頬を膨らませているけれど、の目は柔らかく細くなって、幸せそうで、愛おしい気持ちが湧きあがる。
そしてそれが、俺をこの世で最も幸せ者だと改めて実感させてくれる。
俺は、大袈裟でもなんでもなく、本当に心底、そう思っているのだ。