第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】
玄関のチャイムが鳴って、一気に緊張が身体を突き破る。
久しぶりに会えるとはやる心と恐怖心に背中を押されて、玄関に向かった。
扉を開けると、数週間前よりも綺麗になったがいた。
化粧をしているせいだとすぐに分かった。
誰のためにそんなに綺麗にしているのだろう。
少なくとも、俺のためじゃないことは確かだ。
だって、俺のために綺麗でいたいのだと言っていたのに、最近はずっと一緒にいても、化粧もしなくなっていたから。
でも、化粧をしていると、俺のことを好きだと甘えていた頃のと重なってしまったから、すぐに目を反らした。
「入れ。」
逃げるように玄関のロビーに入った俺に続いて、が家の中に足を踏み入れる。
振り返りもせずに廊下を歩く俺の後ろで、が靴を脱いでいる気配をしっかり感じていた。
今、が俺の家にいる。
恋人だった頃みたいに、同じ家の中にいる。
それを素直に喜べないことが、虚しかった。
先にリビングにやって来た俺は、ソファの上に置いていた黒いトートバッグを手に取った。
これを渡してしまったら、もう本当に、俺との繋がりは消えてしまう。
思わず、持つ手に力が入った。
渡したくないー。
そんな俺の気持ちなんて知りもしないで、はリビングへ入ってくる。
「残ってたもんは大体入れた、はずだ。
後は自分で探せ。」
そう言って、に黒いトートバッグを渡した。
受け取ったが中を覗く。
何を思いながら、無造作に転がる忘れ物を確かめているのだろう。
ひとつひとつに、他愛のない記憶が焼き付いていた、そう感じたのは俺だけだったのかもしれない。
顔を上げたは、なんでもないような顔をして、笑って俺に話しかけたからー。
「ごめんね、急に来ちゃって。荷物、送ってもらおうかなぁとも思ったんだけど、
リヴァイにお願いしたら、忙しいとか言っていつまで経っても
送ってくれない気がしてさ。それに、思い立ったが吉日って言うし。」
「あぁ、そうだな。」
の笑顔を見たくなくて、俺はキッチンへ逃げた。